2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

いつ贋作か――贋作の記号学メモ 12

〈同一性〉の流動化 ところが鑑定家はその鑑定という営みにおいてこのデッドロックをやすやすと乗り越えている。前に述べた事例を思い出して欲しい。 著名な美術史家バーナード・ベレンソンが仲間に告げたところによれば、ある作品が贋作か、それとも未熟な…

いつ贋作か――贋作の記号学メモ 11

〈同一性の形而上学〉の破綻? 「同一性の形而上学」は哲学の歴史とともに古くから営まれてきた。従来の学説を逐一点検しその欠陥を免れたよりよい説を提出するのは喫緊の課題である。だがその種の考察がひどくまがりくねった長々しい道をたどらなくてはなら…