2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

言語の実像を作り直す (4)

6 表記法の問題を主題的に取り上げる前に、われわれの形而上学的物語を要約しておきます。それは、「最初の言語音が沈黙の深みから湧出するという事態を記号系の再帰的動き(recursive move)と見なしうる」という命題にまとめることができます。 公園に舞い降…

言語の実像を作り直す (3)

4 正統的言語探究が描出してきた言語イメージに拮抗しうる、ほとんど唯一の言語の像を提出した者の代表格として、メルロ=ポンティ(M. Merleau-Ponty)をあげることができます。 彼によれば、正しく概念化された限りでの発話――彼はそれを「語る発話」(parole p…

言語の実像を作り直す (2)

〔この講演で理論的ターゲットにしたのは、あくまでもであって、ではない。単一の言語音では言語と呼びうるような記号系にはならない。大雑把に言うと、言語とは語彙と文法のセット(ソシュールのいうとしてのラング)なのである。この講演の趣旨は、言語以…

言語の実像を作り直す (1)

〔すでに公にした、一連の「言語のイメージングをやり直す」(9日分)という考察を1時間程度の講演のスタイルでまとめてみました。以前の記述に比較して打ち出したい論点が鮮明になっていればいいのですが。〕 初めに私の問題意識について簡単に述べましょう。…

、隠すことによって顕示する記号の形態

古い写真だが、D.リンチ監督の『エレファント・マン』を見たときのショックはいまだに覚えている。 エレファント・マンことジョゼフ・ケアリー・メリック(Joseph Carey Merrick、1862年8月5日〜1890年4月11日)は、ヴィクトリア王朝時代のイギリス社会で著名…