2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ピンカー 対 トマセロ (8) 言語観の更新

これからは、人間における言語の発生について、トマセロが考える学説を見ることにしよう。あらかじめ見通しを言えば、彼の考え方は、認知言語学ならびに機能言語学の見地をトマセロ自身の観察からおおはばに肯定したものとなっている。基本の問題は、言語の…

ピンカー 対 トマセロ (7) ピジン/クレオール・手話

引きつづき、ピンカーの生得説に対するトマセロの異議申し立てを見ることにしたい。 ピジンとクレオール 今回問題とされるのは、第一に、ピジンのクレオール化という現象である。 言語を学習するために著しく貧弱な環境に身をおく子供たちは、それではどのよ…

ピンカー 対 トマセロ (6) ”言語獲得”の「問題」

大脳への局在 言語的サヴァンの能力や言語的障害者の無能力が大脳のどの部分に起因しているかについて多くのことは分かっていない。もっとも、さまざまなタイプの失語症の研究、さらに大脳の働きを画像解析するあらたな技術が進んだおかげで、大脳と言語との…

ピンカー 対 トマセロ (5) 言語機能のモジュール性?

ここからトマセロは、ピンカーが展開する言語の「モジュール性」(modularity)の議論に目を転じてゆく。ピンカーのいう言語のモジュール性には四つの側面があるとされる。すなわち、①言語は認知の他の領域とは別の様態で構造化されていること、②言語能力の特…