2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

イメージ図式の哲学的意義 (5) 図式の血肉

ジョンソンは、イメージ図式の標準的な記述の方式には「不利な点」(down side)があるという。これまでジョンソンは、イメージ図式を、生活体(有機体)と環境とがやりとりをするその只中から出現する反復的な やと規定してきた。ところが、彼によれば、身…

イメージ図式の哲学的意義 (4) プラトニズムの”脱構築”

身体化された意味(embodied meaning)へのイメージ図式論からのアプローチ:数学における例証 イメージ図式の理論的意義は、それが抽象的な概念領域へ適用される固有の論理をそなえている点にある。イメージ図式論理(image-schematic logic)は、抽象的な…

イメージ図式の哲学的意義 (3) 認知的無意識

ジョンソンは、イメージ図式に関してその3つの重要な意義を強調している。 第一に、イメージ図式は、われわれの身体経験が意味をもつことを可能とする重要な要因である。身体経験の意味とは、われわれの感覚-運動経験の反復する構造とパターンの意味である。…

イメージ図式の哲学的意義 (2) 生きた身体

イメージ図式が由来するその源泉はなにか あらゆる経験の構造に想像力が浸透していることを見抜いた点にカントの見解の正しさがある。しかしカントは純粋で自律的な――つまり経験の地平を離陸した――理性があると信じていたので、思考における想像力の決定的役…

イメージ図式の哲学的意義 (1) 身心問題を回避する

比喩の認知言語学が我が国に紹介されたのは、レイコフ(George Lakoff)とジョンソンの共著『生は比喩で営まれている』(Metaphors We Live By, 1980 )の翻訳によってであった(邦訳『レトリックと人生』(渡部昇一ほか訳)、大修館書店、1986)。著者の一…

ピンカー 対 トマセロ (9) 結論: 発生の問い

結論 以上の議論を通じて、トマセロはこう結論する、「認知にはさまざまな領域があるが、言語はそのうちで、生得的モジュール(本能)の資格を称することが非常に困難な認知領域である」と。基本的に言語は文化による制作物(artifact)であって、言語共同体…