2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

いつ贋作か――贋作の記号学メモ 5

修復と「贋作」(2) ベルリンの壁がまだ東西ドイツを分断していた冷戦時代の話である。 1951年の西ドイツ国家記念物管理教会は、ようやく修復がなった聖マリア教会内陣画の維持保存のために15万マルクの予算を計上した。実際に修復の仕事にあたったのは、ディ…

いつ贋作か――贋作の記号学メモ 4

修復と「贋作」(1) 上述のように、画家(ないし絵画の制作者)-鑑定(アートの専門家ないし画商)-顧客、という三つの要因がそろわないと、一般に近代社会におけるは成立しない。 しかしこの種の贋作とは別の意味における「贋作」が成り立つ余地はある。これ…

いつ贋作か――贋作の記号学メモ 3

贋作を構成する3つの要因 画学生や無名の画家はしばしば技量を磨くために大家の作品の模写を試みる。模写した作品(コピーやレプリカ)はただそのあり方のままであるかぎりまだではない。 レプリカが贋作となるには、なによりもこの対象が人間の経済活動がく…

恣意性の神話・補遺――〈シリウス星の言語学〉を越えて

(この文章は『総合人間学』に寄稿した論考のブログ・ヴァージョンである。) 1 ソシュールが『一般言語学講義』のなかで「恣意性」を「言語学の第一原理」として提起したことは人口に膾炙している。〈言語記号の恣意性〉という観念ほど誤解されがちなもの…