2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ロボットはを持っているか、あるいは持ちうるか

ルール生成の原理としてのについては、これまで何度か言及してきた。例えば、とカテゴリー化できる運動を形作る動因を人間にそなわる何らかの自発性という意味で(habit)と呼びたいとおもう。これがパースの用語法でもあった。(ちなみに、日本語ではとの二…

複数主義のポイントを逸しないようにしよう

複数主義(pluralism)はグッドマンが展開した世界制作論の、オリジナルであるがまことに問題的な主張である。その問題性について見通しをよくしておこう。 まず複数主義とはどんな主張なのかをおさえておこう。グッドマンの記号主義ではヴァージョンの制作…

記号学の現在形をイメージするためのアイテム集

見出しのように、記号論ないし記号学(ここでは、記号学に統一する)が知的探究として現在どのような情況にあるのかをざっとイメージするために、最小限必要とおもえる事項をリストアップしてみた。1 記号学 (semiology/sémiologie/semiologia/Semiologie)か…

無意識から記号へ

パースのという考え方は人間――個人と集団とを含めて――の事柄にかかわると同時に自然環境の問題でもあった。すなわち、習慣とは一般にやと呼びうる存在者にそなわる論理性の表現であると同時に論理性生成の原理でもある。 さて、花子君(5歳の幼児)が初めて…

投射と習慣

グッドマンの世界制作論(the theory of worldmaking)とパースの習慣論(the theory of habit)とを比較すると、それぞれの言説のいわば形而上学的結構がきわめて類似していること、いやほとんど同一であることがわかるだろう。 この比較はまた、世界制作論…

習慣と解釈項

例えば、卓上のリンゴを見て、あぁこれがリンゴだ、と会得する、あるいは「これがリンゴだ」と発話する、紙のうえにクレパスでリンゴを描く、これがリンゴだと人に差し出す…するとここにがたち現れる。記号の現出をコントロールするのは記号過程の三肢構造で…

記号の三項関係と習慣

パースがの働きを三項関係として闡明したことはよく知られている。一般にパース形而上学におけるの重要性は誰の目にも明らかだろう。すぐに気づくのは、この三性(three-ness)は――もっと的確で印象深い表現はないものか、というと少し違う――カテゴリーの二…

パースの形而上学(連続主義)

世界制作論にパースの習慣論を組み込むためには、パースの形而上学的思索の要点を(不十分にせよ)押さえておかなくてはならない。さしあたり2点をあげておく。 第一はパースの形而上学がカントの超越論哲学の正統な後継者であるという点だ。大学在学中のパ…

心の習慣が世界に安定性(stability)をもたらす

グッドマンの世界制作論をパースの記号主義にかたく結びつけることによってその理解を深めることができる。アブダクションや帰納―この二つはある意味で対称的な推論方式としてワンセットで捉えられる―がアルゴリズムによらぬ特異な「算法」である点をグッド…

世界の制作にはアブダクションが駆使される

従来、知識を拡張する方法として類推(analogy)、帰納(induction)、アブダクション(abduction)などが提唱されてきた。推論の方式には他に「演繹」(deduction)がある。しかしこれはすでに前提に含まれたものを引き出すにすぎず、知識の拡張には役立た…

すべての理論は仮設である

竹内薫『99.9%は仮説』(光文社新書)を夕方本屋で手に入れ移動の電車の中であらましよんでしまった。語り口がとっつきやすいせいだろうか、2006年2月に発売されてわずか一月のあいだにもう5刷を出している。要するに、科学理論は「仮説」にすぎない、とい…

人間の記号実践におけるの問題

ブルーナーの『可能世界の心理』におけるグッドマン論に触発されてここしばらく記号主義の哲学にとっての基礎問題を考えてきた。3月21日に記したように、世界とヴァージョンとは事実上は同一であるが、あえて二者を区別する点にのダイナミズムが捉えられてい…

認知とコミュニケーションは相互作用する

言語について多くの論者が①認知ないし計算、②コミュニケーション、の二つの基本的働きを区別している。(スペルベルたちが言語理解の理論についてまとめたテクストのサブタイトルは、communication and cognitionとあるし、ハーマンはセラーズにならって計算…