2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ピンカー 対 トマセロ (4) 英語という災厄

ピンカーの指摘をまつまでもなく、どんな人間の文化にも言語がある反面、人間以外の動物の集団には、(人間言語に匹敵するような)言語が見当たらない。ただしこの普遍的な観察から、言語の基礎的構造が人間にとって生得的だという結論を導くのは――トマセロ…

ピンカー 対 トマセロ (3) 言語普遍性の捏造?

トマセロは次のように問いを立てる――厳密に言って、生成文法における生得的なものとは何なのか、と。ピンカーの考えでは、生得的なもののリストには4種類のものが含まれる。(もちろん、これらの特徴はあらゆる言語にそなわっており、生得的言語モジュールを…

ピンカー 対 トマセロ (2) の形而上学的前提

生得的なものとは何か 人間が言語を獲得するためには、誰が考えても、人間が言語を使用するにふさわしい生物学的基礎が生物としての人間にそなわっていたはずである。トマセロは、こうした基礎として、1)言語を可能にする認知およびコミュニケーション能力…

ピンカー 対 トマセロ (1) 言語的本能はあるか?

前回に続いて、ふたたび生成文法をめぐるトマセロ(M. Tomasello)の言説を見ることにしよう。 ピンカー (Steven Pinker) のThe Language Instinct: How the Mind Creates Language (1994) は、ふつうならそう多くの部数を重ねることがない言語理論の本とし…

の夢想とグッドマン・チョムスキー論争

トマセロ(Michael Tomasello)が、「どんな証拠ならUG仮設を論駁できるのだろう」(What kind of evidence could refute the UG hypotesis?)という短い論文を書いている。これはStudies in Language 28 (2004)に掲載されたもので、本来、同誌に寄せられたヴ…