2006-01-01から1年間の記事一覧

のイメージングをやり直す(5) 言語の画像理論

われわれは、を言語-パラ言語-身体運動の三つの層からなると捉える。このパースペクティブのもとで、は〔分節音+プロソディー+身体運動〕という構成を具えたものとして出現する。〔後日の補遺:三層構造に対応して、言語音の構造も三つ重ねになるはずだ。例…

のイメージングをやり直す(4) 言語の三層構造

:この二分法を乗り越える 当今の標準的な言語探究は、なりをどのように捉えているのだろうか。とりわけとの関係でそれらがどのような機能を果たすと見なしているのか。最近、情報科学やコミュニケーション研究などの分野でへの関心が高まっているとの印象を…

のイメージングをやり直す(3) パラ言語とレトリック

2 パラ言語学とレトリック研究 の観点から、のイメージを問い直してみたい。正統的言語学に伴走するかたちで言語探究にたずさわってきた種々の試みのうち、ここではパラ言語学とレトリックを採りあげよう。どちらも、正統的言語学とは緊張にあふれた距離感を…

のイメージングをやり直す(2) エネルゲイアとしての

われわれが現時点でなすべきは、に対して正面切って愚直な問いを立てることである。言語の存在論的身分ははたしてモノなのだろうか。 たしかに正統的言語学へ礎石を据えたソシュール記号学においても、事柄はそう単純ではなかった。その構想には、モノではな…

のイメージングをやり直す(1)  パロールの循環

のイメージはそれこそ手垢にまみれてしまっている。記号学の問題としてへアプローチを開始するためには、まずもって真実味のある言語のイメージを描くことから始めなくてはならない。以下はそのための覚書である。テーマがそれなりに大きいので、これはその…

記号の二重性を脱構築する――ソシュールを遠く離れて

という存在構造を解明した点におそらくソシュール記号学の最大の功績を認めうるだろう。しかしながら、われわれはこの種の解明が―控えめに言って―画龍点睛を欠くというおもいを深くせざるを得ない。 問題はソシュール記号学が抱え込んだ根拠のないドグマとし…

複数主義と世界の表情性

われわれはヴァージョンを制作しながら、同時に世界を制作する――グッドマンによる記号主義ないし世界制作論(theory of worldmaking)の核心は、こうした命題に要約することができる。ちなみにとは、知覚・科学・藝術などの主要な記号システムの連携的働きに…

からへ

パースは、生涯を通じて、記号のタイプを体系的に分類しようと、たゆまず考察を重ねた。もちろん彼から学びうるものは、この上なく大きい。しかし結局は、分類学>という問題設定そのものが――純粋な記号の存在を前提しているかぎり――誤りだと言わなくてはなら…

ソシュール記号学の脱構築 プログラム

ソシュール記号学の脱構築のためのプログラムの前半部分を掲げよう。すでに発表ずみの、拙著『恣意性の神話』勁草書房、第一章が基礎になっている。(なお、後半部分において、の議論からへの展開を予定している。)1 「記号論的障害」としての ミニマム人間…

すべては、という欺瞞に始まった?

ソシュール記号学が二つの原理を掲げていることはよく知られている。第一原理とは言語記号の恣意性であり、第二原理とは、言語表現の線形性のことである。 それぞれについて簡単にまとめておこう。記号の存在構造を二重性として把握した点にソシュールの卓見…

からの出発  ――20PLを越えて

折にふれ言語音の論理的生成を追跡してきたが、いまや獲物はほぼわれわれの手の中に収められたと言っていいだろう。それとともに記号学>もまた再発見されたと言うべきである。(記号学>の構想はすでに、菅野盾樹『恣意性の神話』で概略を述べている。) 初め…

初発のアイコンはインデックスでもある

かつてハーヴァード大学で研修していたときのこと。地下鉄駅近くのカフェ―たしかイタリアンだった―で食事したのを想いだす。セットメニューを注文したところ、女性店員にある品物を手渡されこう言われた、「これを持っててね」と。それは、調理場にあった変哲…

の修辞学

1 の比喩を調べてみよう。とはいえ、ここでの観察は日本語に限られているし、その日本語も通時態の片端をカバーするものでしかない。観察のこの狭さを充分に拡張することが残された課題だろう。この点をあらかじめ明言しなければならない。 さて、われわれ…

言語音の誕生 ――共鳴する身体

はどのように生成したのだろうか。この問いは、心理学や言語学の分野でしばしば問われる「言語はどのように獲得されるのか」という経験的問いとは一線を画している。(とはいえ、無関係というわけではない。)むしろこの問いは、という存在者がどのような論理的…

ソシュール主義における形相主義 ――その克服へ

自らの記号思想を前進させようと試みる者にとって、ソシュールの記号思想が先導の役割を果たすことは確かである。しかしながら、ともに歩みを運びはじめるとすぐに私たちは隘路につきあたる。彼の記号観を規定する――必ずしもソシュール自身にとっても自覚さ…

ポンペイの輝き――歴史記号学の構想

西暦79年8月24日、ヴェスヴィオ火山の爆発は、南イタリア・カンパニア地方の諸都市を――生きた人々の生活と文物とをもろともに――灰の底に沈めた。2000年の眠りから呼び覚まされたこの悲劇の古代ローマ遺跡が、いまBunkamuraザ・ミュージアムに戻ってきている…

言葉はどのように生成したか ――シノプシス

母親の胸にだかれたゆうちゃん(生後9ヵ月)があぁと感嘆の声をあげながら指さしをした(やまだようこ『ことばの前のことば』新曜社)。文字通り初発のこのの記号機能はどのような構造をそなえているのか、そしてこの機能は――身体性の変容として――どのよう…

構造主義を超えて――跳躍台としてのイェルムスレフ

イェルムスレフ(L. Hjelmslev, 1889-1965)は言語学におけるコペンハーゲン学派>のリーダーとして知られる。コペンハーゲン、プラハそしてパリで言語学を修め、1931年ウルダール(Hans-Jørgen Uldall)とともに言語学研究サークルを組織し、新しい言語理論G…

記号構造の二重性――ロックの場合

かつてシービオクが記号学におけるとの違いについて語ったことがある。西欧における学知の主要な源流がギリシアに遡れることは言うまでもないが、記号学>もまた医学の父ヒポクラテスのテクストのなかにその始まりの形跡をしるしている。(Σήμειωτική)の構想…

記号学と神秘主義

世界制作論に関連する話をしたあとで、F君が質問しにきた。先生、は世界制作論では扱えないのですか、と。この問いはある意味で出るべくして出たものだと言えるだろう。なぜなら、(ここで深入りはできないのだが)世界制作論は現代版・コスモロジーの趣をも…

はじまりの文字のために―文字の記号学

文字の記号学のために、かつて発表した文章の骨子を補いつつここに掲げておきたい。原文は、菅野盾樹『恣意性の神話』、勁草書房 に収められている。1 現代社会では多くの人々が少なくとも二つの言語の形態を用いている。自国語――例えば日本語――だけしか解さ…

理論をめぐる基礎的問題―記号主義から考える

に関する哲学的考察を"読み切り講義"(5月17日、中ノ島センター)において披瀝するが、そのアウトラインをここに掲げる。1 理論とは何だろうか 1-1 理論の特徴 ・不可解な出来事、あるいは当人には必ずしも不可解ではないが、他人からその出来事について説明を…

テレビ式世界制作(TV-way of worldmaking)という問い

日本記号学会大会の初日のプログラムが実施された。テーマは「としてのテレビ」。「テレビ記号論とは何か」と題されたオープニング討議は、フランス、韓国からゲストを招いて行なわれた。その後にとして「テレビ・コンテンツ研究の現在」についてメディア分…

記号の定義をやりなおす

の古典的定義を紹介しながら、記号の存在構造をどのように捉えたらいいのか、若干の観察を施したい。すなわち古典的定義によれば、記号とは(something which stands for something else)である。これにはしばしば実在論的な読みが施されてきた。モノとして…

知覚のインタフェースが引き渡すもの、記号

人間にとって知覚(perception)は実在への唯一無二の窓である。自然科学者にデータが届けられるのは、当然のことだが、このインターフェイスを通じてである。問題は自然科学だけではない。どんな知的探究でも、それに従事する者は必要なデータを自分の眼や…

記号主義とは何か

「記号主義」は、グッドマンの形而上学を特徴づけるために我々が翻訳のタイトルとして遣った用語である(グッドマン、エルギン『記号主義の哲学』みすず書房、を参照)。しかし用語そのものは我々の創案ではない。これは初めパース哲学の呼び名として遣われた…

理論制作・アブダクション・帰納

とはどのような記号系なのだろうか。 何か不可解な出来事を目前にしたとき、あるいは当人には必ずしも不可解ではないものの、他人からその出来事について説明を求められたとき、我々は理論的言説(theoretical discourse)を企てる。理論的言説とは、「なぜ…

世界制作・アブダクション・帰納

アブダクションあるいは仮設形成(abduction)と帰納(induction)という二つの推論形式は、じつは内的につながっている。この連携の仕組みを調べることによって、我々は世界制作のダイナミズムがいくらかでも明らかになることを期待できよう。 人間が世界を…

ロボットはを持っているか、あるいは持ちうるか

ルール生成の原理としてのについては、これまで何度か言及してきた。例えば、とカテゴリー化できる運動を形作る動因を人間にそなわる何らかの自発性という意味で(habit)と呼びたいとおもう。これがパースの用語法でもあった。(ちなみに、日本語ではとの二…

複数主義のポイントを逸しないようにしよう

複数主義(pluralism)はグッドマンが展開した世界制作論の、オリジナルであるがまことに問題的な主張である。その問題性について見通しをよくしておこう。 まず複数主義とはどんな主張なのかをおさえておこう。グッドマンの記号主義ではヴァージョンの制作…